|
静的分析その2〜各要素の評価を調べてみる |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
お待たせ致しました。「静的分析その2」では、劇場版AIRを構成する各要素への評価を、引いたり足したり割ったり並べたりしながら、紐解いていこうと思います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
劇場版AIRを構成する各要素に対する評価を見てみましょう。Q3(6)・(7)を並べ、更に(6)−(7)を「得失点差」として、一覧表にまとめてみました。この手法は第1回アンケートにおける同様の分析の復習になりますが、母集団が前回よりもかなり大きいため、より納得感のある結果が得られているように感じます。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
このグラフを見ると、評価のされ方によって各要素に一定の傾向があることが見えて参ります。その傾向ごとに各要素を以下3つのグループに分類し、それぞれに解釈を試みることに致します。 グループA:良い評価が悪い評価を上回っているもの(a.キャラデザ、f.声優、g.BGM) グループB:極端ではないが、悪い評価が良い評価を上回っているもの(b.静止画、c.動き、h.オリジナル) グループC:全投票の半数以上が悪いと評価しているもの(d.演出、e.シナリオ) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
このグループAは、以下のような特徴を持っております。一覧表を再掲しますので、見比べてみてください。 ・悪い評価の数に比べて、良い評価がかなり多い。 ・良い評価の数単体でも全要素のベスト3であり、最も人気の高い3要素と言える。 ・逆に、悪い評価の数について見れば、最も少ない3要素でもある。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
例えば、良い評価が悪い評価を上回っていても、悪い評価の数が全要素中ワースト1であるような要素は、手放しで薦められるものとは言い難いはずです。従って、良い評価−悪い評価の差分のみで比較するだけでなく、良い評価自体の数と悪い評価自体の数もよく見て判断する必要があります。その点、今回のアンケートでグループAに分類された3つの要素は、どれも広く一般に薦められる要件を満たしています。静的分析その1で見た様に「均すと悪い評価の方が多い劇場版AIR」において、グループAの各要素は「この点は良かった」と薦めても問題のないオススメポイントであるということです。以下、良い評価の高かった順にコメントしていきます。 まず「f.声優のキャスティング・演技」。悪いと評価した件数が15件(約4%)しかなく、逆に良いと評価した件数が236件(約64%)とダントツに多いため、誰が見ても安心、というレベルに近いですね。評価が高かった理由としては、(1)演技自体が上手かったという一般的な評価と、(2)コンシューマ版と同じ声優を起用したことへの評価、という二つの側面が考えられます。残念ながらこの静的分析中では、その点は明らかにできません。もしかしたら動的分析の過程で何かがわかるかもしれませんね。(現状では管理人もそこまで読み解けていないので、あまり期待しないでくださいませ) 次に「g.BGM・挿入歌」。悪いと評価した件数は53件(約14%)、良いと評価した件数は185件(約50%)。声優さんほどではないですが、概ね人に薦めても問題ない要素と言えるでしょう。劇場版においては、基本的にオリジナルのBGMを用いており、一部に原典BGMの変奏を絡ませるという形がとられておりますが、このうち「オリジナル曲」への評価が高いのか、「原典の変奏」への評価が高いのかについて、残念ながら今回のアンケートから窺い知るのは難しいと思います。大変興味をそそられる部分ではあるのですが、大局的な問題を探る方向で設問を煮詰めた結果、そうした個別部分を探る設問は用意できなかったのです。 最後に、「a.キャラクターデザイン」についてですが、上2要素に比べると結構微妙な感じを受けますね。悪いとした意見も88件(約24%)と多いですし、良いという意見も147件(約40%)に過ぎません。結果的には良い評価の数が悪い評価の数を上回っていますが、この後で述べる「グループB〜賛否両論の要素」の傾向に近いものがあるように思われます。くせが強いと言われることの多い樋上いたるさんの原画のイメージに比べ、劇場版のキャラクターはかなり一般的なデザインになっているため、その点を是とするか非とするかによって意見が分かれるのかもしれませんね。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
グループBについても、特徴を挙げてみましょう。 ・得失点差上はマイナスとなっており、悪い評価の方が多い。 ・しかし、良い評価の件数自体は70〜90件台とそこそこに数があり、全く良い評価を受けていないわけではない。 ・悪い評価の件数を見ても、全体の半数を超えるような極端な悪評はない。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
一般的に、過半数が「悪い」と評価するものであれば、「概ね悪い評価を受けるもの」と言ってもさほど差し障りはないでしょう。しかし、半数に満たない人から悪い評価が上がっているに過ぎず、良い評価もそこそこの数があるというものを「悪いもの」と断言するのはやや言いすぎと感じますね。このグループBに分類した3つの項目はそのような条件に当てはまり、良いと評価する人もいれば悪いと評価する人もいる「賛否両論」の項目と言えます。 面白いのは、このグループBの項目にはそれぞれ、「良い評価が多いほど悪い評価も多い」という傾向が見られることです。特に「オリジナル要素」に対する評価は、良い評価、悪い評価とも、グループBのうち最大になっております。これが意味するところは、「原作にないオリジナル要素は、良くも悪くも気にかかる部分である」というところでしょう。逆に、良い評価も悪い評価も少なかった「アニメ(動き)の質」は、「最も印象が薄かった部分」とも言えそうです。この辺りは、「特に重視された要素は何か」の項でもう少し詳しく述べたいと思います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
最後に、グループCです。 ・得失点差上は大きくマイナスになっている。 ・良い評価の件数自体は80件台とそこそこに数があり、グループBとさして変わらない。 ・しかしながら、悪い評価が非常に多く、ともに過半数を超えている。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
悪く評価した件数が最も多い2項目です。この2要素が、劇場版AIRの悪評を一身に背負っているのではないか、と思わせるほど、際だって悪い評価が多く寄せられております。グループAのトップ「f.声優のキャスティング・演技」と対極の位置にある、ワースト2と言えましょう。 しかし、興味深いことに良い評価の数は、グループBと大差ありません。ベスト1である「声優のキャスティング・演技」に対する悪評は極端に少ないですが、対極に位置するはずのワースト2には、良い評価もそれなりに寄せられている、ということなのです。この良い評価を寄せた人たちが、どのような人たちであるのか。その点が動的分析の過程で読み解ければ、一つの傾向が見える気が致します。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
さて、続いては見方を変えて、これら劇場版の要素はどのくらい注目されていたのか、またそれは一般にアニメ作品の鑑賞にあたり重視される点とどう違うのか、について考察してみます。 まず、Q3(6)・(7)を加算し、「評価点」とします。これは、良い悪いは別にして何人の人がその要素を気に留めたかを表す数字となります。これを、投票人数371で除したものを「評価率」とします。評価率が100%に近いほど、多くの人がその要素に注目したことになります。 更に、Q2(1)の結果も並べてみましょう。Q2(1)では、一般にアニメ作品において重視する点をお聞きしております。よって、Q2(1)の結果を「重視点」とし、同様に投票人数で除したものを「重視率」としましょう。この「評価率」と「重視率」の「差分」を求めることで、劇場版AIRにおける各要素への注目のされ方が浮き彫りにできるはずです。(なお、表中濃いめの赤は最も比率の大きい数項目、オレンジは次点の数項目、水色はは最も比率の小さい項目を示しています。) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
まず、「評価率」の高低を見てみます。特に高いのはグループCに属する2つの要素、「d.演出」と「e.シナリオ」です。これはすなわち「グループCが劇場版AIRにおいて最も目立った要素」であることを意味します。言い換えれば「最も目立つ箇所が、圧倒的に悪い評価の部分だった」ということになりますね。このことが、劇場版AIRに対する評価が総じて低いような印象を与えている、と読み解くことが出来ます。残りの要素については大きな違いがありませんが、次点としてグループAの筆頭である「f.声優」とグループBの「h.オリジナル」がやや高めであること、また「c.動き」が一段低く出ていることに留意しておきます。 続いて、「重視率」の方を見てみましょう。ここでは、「e.シナリオ」が突出して高いことが目立ちますね。その他については大きな差が見られませんが、「h.原作のネームバリュー」部分だけは異常に低い数字が出ています。原作が有名であるかどうかは関係ない、ということを意味しているようです。 そして最後に「差分」について考察してみますが、その前に一点。「h」については選択肢が異なるため、差分の分析はあまり意味を持たないかもしれません。設問を作成した時点では、「互いに表裏をなす選択肢」として用意し、ここでの分析が可能となるようにしたつもりだったのですが、今振り返ってみればQ2(1)側を「原作のネームバリュー」に限定してしまったのは失敗だったように感じます。従いまして、この部分は参考程度にお読み頂ければと思います。 さて、一般的なアニメであれば、「重視率」が高い要素は「評価率」も高く、逆に「重視率」が低い要素は「評価率」も低く出るはずです。従って、「差分」の絶対値が大きい要素には、そのアニメが一般のアニメと違うような、そうなるべき何らかの原因がある、と考えるべきでしょう。ここで、「差分」の絶対値が5%を越える値を示している要素を見てみましょう。重視率の方が高い、つまり、通常よりも劇場版AIRで重視されていない要素が「c.動き」です。逆に、評価率の方が高い、つまり通常よりも劇場版AIRで重視されている要素が「d.演出」「f.声優」「h.オリジナル」の3つ、ということになります。これら4つの要素について、簡単にまとめてみましょう。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「c.アニメ(動き)の質」 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この要素は「グループB」に属します。従って、「賛否両論」という評価をされている要素です。しかし、ここでは「評価率」は低く出ていますが、本来ならばもう少し重視されていい要素でもあるわけです。 これらの結果を一つに繋げていくと、およそこのようになるでしょう。「劇場版AIRにおけるアニメ(動き)の質は、各要素のうちで最も『可もなく不可もなし』に近い要素である」と。つまり、他の要素の目立ち方に比べれば、取り立てて素晴らしい動きとも極端に非難されるほど悪い動きとも評価されていない、印象に残りにくい要素だったということです。劇場版AIRを特徴付けるものとして、この「アニメ(動き)の質」の側面で語るのは、やや不適当であるとも言えるでしょう。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「d.演出効果」 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この要素は「グループC」に属し、「e」とともに最も非難された要素です。「評価率」も「e」と同程度の高い数値を出しています。ところが、「重視率」だけは「e」に比べるとまるで低く、従って「差分」が突出した大きい値を示しているのです。 これは、「通常『演出効果』を前面に出してアニメを評価する人は多くないが、劇場版AIRについてはむしろ『演出効果』を大きなポイントとして評価を語る人が多かった」ということになるでしょう。劇場版AIRでも当然重視されたシナリオ要素と、予想外に重視された演出要素。同じグループCであっても、その2点の位置付けはかなり異なっているわけですね。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「f.声優のキャスティング・演技」 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この要素は「グループA」に属する良い評価の要素ですが、「差分」はやや大きい数値を示しています。 つまり、一般的に重視される度合いよりも、劇場版AIRでは大きく重要視されたということです。この原因として想像できることは2つあると思います。一つは「声優の演技が並外れて素晴らしかった」こと。もう一つは「普段重視される要素があまり良く評価されなかった反動として、相対的に評価する件数が増えた」こと。このどちらの要因が大きいのか、今はまだ何とも言えません。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「h.原作にないオリジナル要素」 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この要素については前述の通り選択肢自体に誤謬が含まれるため、参考として簡単に述べるに留めます。「重視率」が極めて低い、すなわち「原作」に必ずしもこだわらないという結果が出た一方で、「評価率」はかなり高めの数値が出ています。これは、「劇場版AIRのオリジナル要素が並外れて目立つものであった」と読み解くことが可能です。同じグループB〜賛否両論に属する要素であっても「c」とは全く異なり、「オリジナル要素については、可とする声も不可とする声も、普通では考えられないほど大きかった」と言えるのではないでしょうか。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
大変長くなりましたので、以上の考察をなるべく簡潔にまとめてみたいと思います。 ・劇場版AIRにおいて、一般のアニメよりも特に注目されているのは「演出効果」「声優のキャスティング・演技」「原作にないオリジナル要素」の三点。 ・このうち、「演出効果」「オリジナル要素」に対しては「悪い評価」の方が相当多く、「声優」に対する「良い評価」だけでは悪評が払拭できていない模様。 ・この他に、一般のアニメでも特に重視されている「シナリオ・脚本」に対する評価もかなり悪い方へ触れているため、劇場版AIRが総評として「悪い作品」と語られる機会が多いように見受けられる。 ・ただし、全要素において「良い評価」の件数が一定数以上あることには留意すべきであり、多くの要素において「賛否両論」という側面があることを無視してはならない。 さあ、いかがでしたでしょうか。もしよろしければ、管理人のブログなどを通じて、ご意見を頂ければ幸いです。次回はいよいよ動的分析に入ります。その1では「原典経験の差と劇場版評価の関係」について詳しく見ていきたいと考えております(予定であり、変更になる場合がございます)。どうぞ、楽しみにお待ち下さいませ。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||